映画スターが英語の先生! 知識と感動の映会話学習!!

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isbn978-4-89407-167-4

アメリカ映画解体新書

解説書/写真集

一般の映画評論にとどまらず、シナリオの魅力を伝える英語セリフの引用と、独自のストーリー解説によって、アメリカ映画の面白さを再発見できるエッセイ集。まだ観ていない作品はきっと観たくなります。


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内容紹介

 本書の最終章に登場するロブ・ライナー監督(『アメリカン・プレジデント』、『ミザリー』)は、“希望”についてこう語っている。「私の作る映画には結局どれも、何かを達成しようとして奮闘する人間が登場します。たやすく達成できることではありませんが、私が映画に描くのは決して手の届かない夢ではないと思うのです。私は観客に、きっとそれは叶う、その何かを手に入れるために奮闘し続けなければという、高揚した感情を残しておきたいのです」。アメリカ映画のサービス精神をとてもよく言い表した言葉に違いない。彼はインタビューの最後をこう結んでいる。「ただ受け入れるだけだったら、何の希望もないじゃないですか。・・・闘って得ようとしないなら、私たちに希望は全く訪れません」。やれやれ、健康的で前向きな“アメリカン・ドリーム”かと、苦笑したもうなかれ。『ショーシャンクの空に』のラストで私達が得る“希望”の感情。“Hope is a good thing”(希望はいいものだよ)-映画の中で二度も語られるあのセリフのような“希望”を観客が自分のものとして感じ取るために、どれほど精密な企画、独創的な工夫、完璧なプロフェッショナリズムと粘り強い実行力を、製作者たちは注ぎ込んだだろう。『アポロ13』(第11章)を観ても、『風と共に去りぬ』を観ても、それは容易に納得できる。アメリカ映画がそのサービス精神を傾けた映像で、私達を上手にだまし続けてくれることに期待を寄せたい。
 
 本書はアメリカ映画の解説書、及びエッセイ集である。一般的な映画評論とは違い、作品の面白さを再発見できるような読み物として、独自のストーリー解説を心がけた。それとともに、「洒落た英語の言い回しを学ぶ」式の小手先のハウ・ツー書になることを避け、あくまでもシナリオの魅力を伝える英語セリフを引用することに努めた。掲載タイトルはすべてが必ずしも一級映画とはいえないが、人生や人間性や文化について語るべき何かを持っている作品、商業主義には偏らないが、かといって観衆を無視した独りよがりにも陥らない、絶妙のバランスを保っている作品を選び抜いた。またシナリオの引用が可能なことが第一の条件だったのは、言うまでもない。「シナリオを読む」の項目では映画のハイライトとなるシーンを抜粋し、対話セリフを引用しながらシナリオ分析を試みる。作家や脚本家を目指す人、映画で口語英語を学びたい人には最適のコーナーだが、シナリオは心理描写や人間関係における化学作用についても学ぶところの大きい、興味深い読み物であることがおわかりいただけるだろう。「背景あれこれ」は、ストーリーやキャラクター、俳優や監督など映画の背景を成す様々な要素について書いた、気ままなエッセイである。また一言セリフとともにストーリーのみを紹介したコラム<どこかで使える? こんなセリフ>のほか、ジャンル別に様々な作品をオムニバス風に紹介したエッセイを各章に配した。〈中略〉
そして最終章『映画製作の舞台裏に迫る』では、俳優と監督のインタビュー録を掲載。クリエイター達の心の内や、スクリーン上には見ることのできないメイキングにまつわる様々な裏話を紹介した。
試しに目次の中から自分のフィーリングに合った映画の一項目を選んで読んでみることをお勧めする。その作品をまだ観ていない人はきっと観たくなり、すでに観た人は、その魅力を再発見する。そして俳優のセリフにもう一度耳を傾け、かつて惹かれたあのキャラクターに再会したくなる-本書がそんな本になれたらと、かすかな“希望”を抱いている。 (著者 INTRODUCTION より)

シナリオを読む 陽のあたる教室

作曲家への夢をあきらめた先生のシンフォニー

 「学校の先生はサラリーマン化した」と言われるようになってから、かなり長い年月がたちました。経済が豊かになって職業の選択肢も広がり、生活を支える緊張感が少なくなった社会では、熱血教師なんていう力んだ姿勢はどこかズレた気恥ずかしいものという価値観が蔓延した。
 
 そこで登場したのが、“デモ・シカ先生”です。「先生デモやるか」、「先生くらいシカやることがない」という軽いノリが受けて、先生市場は粗製濫造の時代を迎えました。出来合いの教育者に対する信頼感はめっきり薄れ、そんな学校制度に組み込まれた子供たちは、ますますストレスを内向させ、シラケ顔になっていったのです。

 仮に30年前に中・高生を教えていた先生が、今の教育現場に復帰したとしたら、シラケ切った生徒たちにハッパをかける気概を失わずにいられるでしょうか。その昔、冷暖房もない汗臭い体育館で、“便所スリッパ”をはいてブラスバンドを指揮していた先生。体調の悪い子をつききりで介護しながら山のキャンプに同行した先生。落ちこぼれそうな子を毎朝起こしに行ってから登校していた先生-30年前の先生方が持っていた教育者としての使命感、時間と労力を惜しまず生活ごとドップリ生徒と向かい合った情熱や献身は、もはやオールド・ファッションな教師像として珍重され、『金八先生』の中に描かれるだけのものとなってしまった。珍しいからドラマにもなるわけですが、それが普通の先生像だった時代もあったのです。

 この映画の主人公グレン・ホランド先生(リチャード・ドレイファス)も30年前J.F.ケネディ高校の音楽教師に就任したころは、そんなデモ・シカ先生の一人でした。

“I only got my teaching degree as something to fall back on, and now I have.”

私は教師の資格は単に滑り止めに取っといただけなんですが、今や本当にそうなってしまいました。

 新顔としては、口が裂けても職場では言えないセリフ。しかも相手は学校の経営者でもある校長先生(オリンピア・デュカキス)。「あとで私のオフィスへいらっしゃい」(生徒が先生にお小言を食らう時に必ず聞かれるセリフ)と早速にらまれてしまったが、どうってことはない。ホランド先生には教職なんかよりずっと大事な“ライフワーク”があったのです。いつかきっとジョージ・ガーシュインのような作曲家になって、交響曲を書きたい。自分にしか書けない、しかもアメリカを代表するような opus(作品)を・・・そんな夢に支えられているから、今だけは貧乏暮らしにも耐えられる。作曲に没頭する時間さえ確保できれば、給料が少なくたって構わない。

 というわけで、最もフリー・タイムが多く得られそうな学校の先生になったのですが・・・同僚のフットボール・コーチ(ジェイ・トーマス)は笑って言います。「フリー・タイム? 最近いつフリー・タイムがあったか覚えてないくらいだよ」。

書籍情報

書名:アメリカ映画解体新書
著者:一色 真由美
仕様:A5判 272頁
定価:1,500円(本体価格)
発行日:1997年10月7日
出版社:株式会社フォーイン
スクリーンプレイ事業部
ISBN978-4-89407-167-4